技術情報2022/12/15
今回は、配管設計で使用する 『バルブ』について、まとめてみました。
バルブとは「配管内を通る流体の方向・圧力・流量を制御する機器」を言います。
配管内の流れを遮断する基本的な機能だけでなく、流量を調節したり、逆流を止めたりと、様々な機能を持つバルブがあります。
代表的なバルブとして、玉型弁、仕切弁、バタフライ弁、ボール弁、逆止弁、ダイヤフラム弁などがあります。
一覧にして特徴を纏めてみました。
次に それぞれのバルブの特徴を掘り下げてみます。
■ 玉形弁(グローブ弁)の特徴
●構造
S字状の流路の途中に弁体を押し付けて、流路を塞ぐバルブです。
流体の流れをしっかり止めたい時、流量を調整したい時に使われます。身近な例で言うと、水道の蛇口はこの玉形弁です。
下側が膨らんだ形をしており、玉のような外観をしている事から、玉形弁と呼ばれます。
玉形(Globe)の英語を取ってグローブ弁とも言います。
後述するボール弁と名前が似ていますが異なる物ですので、混同しないように注意しましょう。
●利点
・密封性が高い
●欠点
・弁体が流体の抵抗を受けるため、開閉トルクが大きい
・ハンドルを何周も回す必要があるため、急な開閉はできない
・流路がS字状をしているため、圧力損失が非常に大きい
弁体の開度を調整する事で、流量を調整できる玉型弁の変形として、
弁体を針状にして流量を微量調整できるニードル弁、
流体の入口と出口が直角になったアングル弁などがあります。
■ 仕切弁(ゲート弁)の特徴
●構造
流れに垂直に弁体を下ろして流路を遮断するバルブです。
開けた時に弁体をしまうスペースが必要なので、背丈が高い構造をしています。
流体の流れをしっかり止めたい時に使われます。
中間開度で使用すると弁体が振動するため、流量の調整には使えません。
基本的に全開or全閉で使用します。
●利点
・密封性が高い
・全開の時は流路を遮るものが無いので、圧力損失が小さい
●欠点
・ハンドルを何周も回す必要があるので、急な開閉はできない
・中間開度で使用すると弁体が振動するため、流量の調節には使えない
■ バタフライ弁(バタ弁、ちょう弁)の特徴
●構造
配管内部で円盤を90度回転させることで開閉するバルブです。
全体的に薄い構造をしているので、設置スペースに余裕が無いときに便利です。
中間開度での流量の調整機能にも優れています。
●利点
・薄い構造をしており設置スペースが小さい
・円盤を90度回転させるだけなので、開閉操作が容易
・弁体の開度を調整する事で、流量を調整できる
●欠点
・弁体に接する弁座がゴム素材の場合、高温・高圧の流体には使用できない
(その場合はシート素材をメタルにする等で対応できます)
■ ボール弁の特徴
●構造
孔の貫通したボールが弁体となり、ボールを90°回転させて開閉するバルブです。
身近な例で言うと、ガスの元栓にはこのボール弁が使われています。
前述した玉形弁と名前が似ていますが異なる物ですので、
混同しないように注意しましょう。
●利点
・ボールを90度回転するだけで済むので、開閉が容易
・全開時には流路が一直線になるので、圧力損失が小さい
●欠点
・ボールを支える弁座を樹脂で作る事が多いので、高温(目安200度以上)の流体には不向き
・中間開度での流量の調整には不向き
■ 逆止弁の特徴
●構造
流体の逆流を防ぐために使用されるバルブです。逆流が生じた際に、自然に弁体が閉まる構造をしています。
人がハンドルなどで操作する必要はありません。
●利点
・逆流が生じれば自然に弁体が閉まる
●欠点
・逆流の勢い(背圧)が弱いと、密封できない
・圧力損失は比較的大きい
・圧力の小さいエアー配管などは、※クラッキング圧に注意が必要
※バルブが開き始めて、ある一定の流れの量が認められる圧力。
圧力が小さいと弁体が押し開くことが出来ない事象が起こり得るので注意が必要
■ ダイヤフラム弁の特徴
●構造
ゴムやフッ素樹脂などのやわらかい素材で作られた「ダイヤフラム」と呼ばれる膜越しに弁体を上げ下げする事で開閉するバルブです。
流路と弁棒がダイヤフラムで隔離されているため、ねじ部の潤滑油などの不純物が流体に混入する心配がありません。
こうした特徴から、不純物の混入に特に気を遣う、デリケートな流体を扱うときにダイヤフラム弁が採用されます。
●利点
・不純物が流体に混ざり込まないので、デリケートな流体を扱える
・流路が流線形をしているので、圧力損失が比較的小さい
・弁体の開度を調整する事で、流量を調整できる
●欠点
・ダイヤフラムの材質によって温度と圧力に限界がある
・ハンドルを何周も回す必要があり、急な開閉はできない
■ まとめ
代表的なバルブとして、玉型弁、仕切弁、バタフライ弁、ボール弁、逆止弁、ダイヤフラム弁について説明しました。
「流れを止める」という基本的な機能は同じでも、バルブによって様々な特徴を持っています。
用途に応じて適切なバルブを選定しましょう。
今回のお役立ち情報は、以上となります。
TECHNICAL ENGINEERING GROUP(設計事業グループ)
設計事業グループ/北村 |