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青いグローブ

青いグローブイメージ BLOG2024/06/14

川井です。

生まれは長野県松本市の外れ、片田舎にある巨大な市営団地。
この年になって知ったのですが、当時その団地は世帯所得ごとにエリア分けされていたようで、どうやら自分のエリアは、世帯所得150万/年以下、かなりの貧困エリアだったと母から聞かされました。

母は結婚してすぐに自分を身ごもり、父はいろいろな職を転々としていたようです。

「あの頃は、山梨のばあちゃんから借金もあったのよ」

そう母は話します。
なかなか定職に就けない父、母は四畳半の居間に大量の内職段ボールを積み上げて、その真ん中で夜な夜な日銭を稼ぐ。
借金も抱えながら、その日一日を生きる、そんな毎日だったようです。

そんな貧乏家族でありながら、両親は私を、新設の私立幼稚園に入園させます。
その幼稚園は、「才能教育」(音楽を通じて心豊かな人間を育てることを目的とする教育)を推奨しており、有名なヴァイオリニスト鈴木鎮一のその理念を学ばせる環境がそこにありました。
だから、園児のほとんどが音楽を習っていて、私も入園後すぐにバイオリン🎻を習い始めます。
私立幼稚園の高い保育料、音楽教室の高い月謝、高い弦楽器、録音/練習用カセットデッキ、発表会で着るフォーマルや革靴...
生活するのが精一杯な貧乏家庭なのに、息子の教育費に全振りする両親。
そんな中、小学校4年生くらいまでは必死にバイオリンを練習して、推奨レベルに何とかしがみついてはいたものの...
外で遊ぶことの誘惑には勝てず...
毎日、団地仲間やクラス仲間と一緒に草野球ばかりするようになり...

バイオリン練習の時間が短くなり...
曲を覚えることも技術も鈍くなり...
教室仲間と格差が生まれ始めて...

・・・やりたくない。

母親に反発するも、
叱られ、
嫌々やる。

そして、母親に切願します。

「リトルリーグに入れさせろ!」

そんな金銭的余裕は当時の貧家にあるはずもなく、もちろんその願いは叶わず。
でも素手で野球をする自分を見兼ねてか、グローブだけは買ってくれました。それも当時は珍しい青いグローブ。
毎日壁当てキャッチボール、草野球で活躍、たまに父親ともキャッチボールして、使ったら必ずドロース浸み込ませて...
けっこう大事にしてました。
そして12歳、小学校卒業...
同時にバイオリンも引退...
貧しいながら、8年間もずっとお金と労力も掛け続けくれた親の期待に、「親の心子知らず」であきらめてしまった自分。
親の「才能教育」への投資は、水泡に帰してしまいました。


先日、孫を連れて帰省したときのこと。
母は、当時バイオリン練習で録音したカセットテープを出してきて聴かせてくれました。
40年前のカセットテープ、ラベルに日付まで手書きして大事に保管してくれていました。
音質は最悪、でも一生懸命に曲を弾く10歳の自分がそこにいました。
その録音空間には、一緒に聴いている若き母もいたことでしょう。
黙って聴き入る老いた母の姿に哀愁を感じつつ...
テープが止まった後に当時の苦労話を笑いながら話してくれる母に、申し訳ない気持ちが一気に込み上げてくる自分。
「12歳のオレ、もうちょっと頑張れなかったのかな。あきらめんなよ!」
親の立場になったから気づかされたのか...親の苦労と愛情を、今更ながら思い知らされた瞬間。


そして更に「親の偉大さ」は続きます。
1年生になった次男坊が、野球を始めたことを伝えると...

父親は物置の奥から何かを持って私に手渡します。
「これまだ使えるから持ってけ」って...

青いグローブ

あの青いグローブ...
そして親父用のグローブ。
我がままを見兼ねて買ってくれたグローブ、バイオリンあきらめるきっかけになったかもしれないそのグローブ。
そんなモノまで、大事に40年間も残しておいてくれた父親。
さすがに、涙しました。

貧しい時代に、子の可能性に賭けて期待してくれた親に、感謝と申し訳ない気持ちでいっぱいです。
一方で、まだ親が元気なうちにそんな親の偉大さに気付けたことは、とても幸せなことかもしれません。
次の帰省には、じいさん用グローブをプレゼントして親子三世代でキャッチボール⚾
そして40代最後の趣味チャレンジで、
バイオリン復活かな🎻🎻🎻

最後に、
「もし魔法が1つ使えるなら、どんな魔法がいいですか?」
過去に遡れる魔法を使って、12歳の自分に、
「今あきらめたら後悔するぞ!」
そう叱責してあげたい。

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